Re.My_little_sister (23〜24話)

23)
「おーい、健太。ちょっとこいよ」
昼休み、教室の後ろに数人の男子生徒が集まっている。
「なんだよ」
「いーから、いいもん見してやるから、早くこいって」
仲のいいクラスメートの1人が手招きした。昂奮して声が少し上擦っている。
「見てみろよ」
「えっ!」
男子生徒が取り囲んだ机の上にちょこんと置かれていたのは、女性の下着だった。
「パンティーって言うんだろ、これ」
丸まった白色の綿のショーツ。小さく可愛いピンクのリボンが一つついている以外、とりたてて特色のない下着だった。
「女子ってさ、こんな小さいの覆いてんのかよー」
「俺、初めて見た…」
同じクラスの女子が普通に履いていそうなデザインだけに、余計、想像力を掻き立てられて僕らを昂奮させた。みな、それぞれ好き勝手なことを言っている。
「股のとこ、布が2枚になってるんだ…」
実際、僕も洗濯物を干すときに、その、麻衣の、…見たことはあるけれど、知らない誰かの下着っていうのは初めて。
僕は務めて平静を装って聞いた。
「これ、どうしたんだよ…」

24)
答えたのは、僕の友人ではなく、野球部のヤツだった。もちろん補欠で球拾いだが、甲子園を目指すといって頑張っている。結構、仲のいい1人だった。
「さっき休み時間にさ、先輩がくれたんだよ。付き合ってる彼女の家に行った時、タンスからごっそりガメてきたんだって。で、1年の俺たちにも配ってくれたんだー」
「まじかよ、いいな。俺もほしいぜ」
言葉にはしなかったけど、僕も、ちょっと欲しいと思った。
「でもさー、その彼女って、もしかしたらブスかもしれねぇーじゃん」
「うわっ、それマヂ勘弁。やべーよ、それ」
大きな笑い声に、近くにいた女子生徒がけげんそうな顔でこっちを見た。
「違うって。すげー可愛いんだって」
「ほんとかよー。おまえ、見たことあんのかよー」
「ないけどっ」
「やっぱ騙されてるんじゃねーの」
「すげーデブだったりして」
ゲラゲラゲラ。
「だって、その先輩いつもすげー可愛い子としか付き合わないことで有名なんだぜ」
ムキになって反論している姿が、僕にはおかしかった。
「だからきっと、可愛いに決まってるよっ」
そのとき、僕の脳裏には、洗濯物を干すときに見た麻衣の下着が浮かんでいた。
「うるせーな。今夜このパンティーおかずにすんだから、変なこと言うんじゃねーよ」
僕は午後の授業の間中、麻衣の下着のことがたびたび思い浮かんで、とても集中できなかった。
(つづく)


yuki
2005年08月28日(日) 17時52分53秒 公開
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