Re.My_little_sister (30〜31話)

30)
なんで麻衣の携帯にあいつからメールがきたのか、あいつと麻衣はどういう関係なのか…。
気になって気になって、昨夜はほとんど眠れなかった。
授業にも、部活にも、全然集中できない。ともかく、麻衣に聞いてみよう。
きっと、部活の用事で連絡を取ったに違いない。麻衣に限って、僕以外の男の人と親しくメール交換なんかするはずがない。
野球部のマネジャーなんだから、同じ部の部員から連絡があったって、おかしい話じゃない。
きっと僕の気にしすぎだ。麻衣に聞いてみれば分かる。すぐに解決する。
「お兄ちゃん、そんなこと気にしてたの」と言われるに決まっている。
「お兄ちゃん、そんな訳けないでしょ」と笑われるに決まっている。
「お兄ちゃん、もしかして焼きもち焼いたの」と照れるに決まっている。
「お兄ちゃん、焼きもちやいてくれるなんて、嬉しい」と言ってくれるかもしれない。
そうだ、そうに違いない。
部活が終わったあと、隣のグラウンドに麻衣の姿を探した。
部室に入っていく麻衣を見つけた。
そして、その後を追いかけるように、あいつも部室に入っていった…。

31)
何を、何を話しているんだ…。
ドアが開いていたので、こっそり野球部の部室に忍び込んだ。
カーテンの向こう。部室の奥側。シャワー室や用具置き場の方から話し声が聞こえる。
「先輩…」
「そこ座って」
耳を澄ます。話し声だけが、聞こえる。
「…昨日は、ありがとうございました」
「当たり前のことをしだけさ。それより、どうしたの、昨日」
「それが、よく分からないんです。突然、静香先輩に呼び出されて、そしたら、いきなりあんなこと…。恐くて、恐くて、どうしていいか分からなくて…」
「今日は大丈夫? 酷いことされてない?」
「はい。何も」
「良かった。静香先輩は子供のころから知ってるんだ。よく言っておいたから、もう大丈夫だと思うよ」
「本当に、助けてくれてありがとうございました」
えっ!? どういう、どういうこと…? 助けたって!? 誰が、誰を? まさか…!?
「麻衣、こっちに来いよ」
「…」
「いやか」
「…いえ」
「俺、本当は麻衣のこと…」
「えっ…そんな…」
「…だったんだ」
「そんな…そんなこと…今さら、言われても…、そんな…」
「信じてもらえないのも仕方ないと思う。でも、本当なんだ」
「嘘? 今まで…、しておいて…、なのに…」
「自分でもどうかしていたと思う。でも、嘘じゃない。信じて欲しい」
「本当なんですか…」
「あぁ」
「本当に、本当なんですか…」
何を、2人は何を話してるんだ? 麻衣はいったい、何の話をしているんだ?
ボソボソと言葉を交わし続けている。
「信じて、くれるね」
「はい…」
(つづく)


yuki
2005年09月01日(木) 18時22分04秒 公開
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