Re.My_little_sister (36〜37話)

36)
「なに、してるの…」
部屋の入り口に麻衣がいた。青ざめた表情で、僕を見ている。
「麻衣!? あっ」
麻衣の視線は、僕の手の中にある携帯電話へ。
「携帯っ! 私の!」
「ち、違うんだっ、これはっ」
駆け寄ってきたピンクのパジャマ姿の麻衣が、僕の手から携帯を奪い返した。
「いやぁぁぁっ、携帯覗き見するなんてっ!」
「まっ、待ってくれ。違うんだ、誤解なんだよ」
「最低! 最低! 最低っ!」
「麻衣のために、麻衣のためを思って、心配して」
「ひどい! ひどい! ひどいっ!」
うろたえながら言い訳する僕の言葉に、麻衣は耳を傾けようとしない。
「ぼ、僕の話を聞いてくれよっ、麻衣、聞いてくれ」
「出てって! すぐに出てって! 2度と私の部屋に入ってこないで!」
麻衣は部屋の真ん中でうずくまっている。僕は見下ろしてオロオロしている。
「僕は麻衣とあいつのこと、久保のことを心配して、それでっ。あいつは麻衣のこと騙して、それで」
「久保先輩は、麻衣のことを助けてくれたもんっ」
麻衣が振り返り、キッと僕を睨み付けた。
「久保先輩は誰かみたいに見てみぬふりしなかったもん。久保先輩は麻衣のこと助けてくれたもんっ」
「そ、それは。麻衣、ちょっと聞いてくれ。それも誤解なんだ。そうじゃないんだ」
「久保先輩は麻衣のことっ」
「お願いだ、落ち着いて、な、携帯を勝手に見たのは謝るから、だから、ちょっとでいい聞いてくれ」
「好きっていってくれたもんっ!」
「えっ!?」
「交際を申し込んでくれたもんっ!」
「な…」
「久保先輩とお付き合いすることにしたの。先輩のこと悪くいうの許さない!」
「そ…」
「出てってっ!」
呆然と、部屋の外に押し出されてしまった。
閉じられた扉の向こうから、麻衣に言われた。冷たい声で言われた。
「…やっぱり、お兄ちゃんが犯人だったんだ」

37)
「犯人!? どういうこと?」
「…私の下着、学校で売ったでしょ」
「なっ、な、な、誰がそんなことっ」
「久保先輩が教えてくれたの。学校で、お兄ちゃんが私の下着を売ってお金を稼いでいるのが噂になってるって。びっくりして、そんなことある訳ないって思って、でも、家に帰ってきたらタンスの中から下着がたくさん盗まれて…」
「麻衣っ、僕が、僕がそんなことするはずないだろ! そんなの嘘だ、麻衣、聞いてくれ!」
「まだそんな言い訳・・・。ごまかさないでよっ、嘘ばっかり、嘘つき、お兄ちゃん、見損なったよ」
「頼む! ここを開けてくれ、僕の話を聞いてくれ!」
「久保先輩たちが一生懸命取り返してくれて、お兄ちゃんから直接買ったって人からも、謝ってもらったんだもん。お兄ちゃんから声かけられたって言ってたもん」
そんな馬鹿な! そんなことあるはずがない! おかしい、絶対におかしい!
「麻衣、僕を信じて! 僕は絶対にそんなことしてないっ、話を聞いてくれ! 麻衣は騙されてるんだ!」
しかし、ドアの向こうからは麻衣のしゃくりあげる泣き声しか聞こえない。
いくら呼びかけても返事はなかった。
「健太っ、兄妹げんかも大概にしなさい。妹泣かすんじゃありませんっ」
階下から、母親の怒鳴り声が返ってきた。
そんな馬鹿な…。
(つづく)


yuki
2005年09月05日(月) 00時05分53秒 公開
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