例のインスパイヤ
2010.03.12 Friday 20:00
yoshino
なる。
(村本が女子中学生に手を出したらしい)
(誰にでもやらせる子だってさ)
(やつの部屋がヤリ部屋になっているそうだ)
級友たちの噂話がだんだん現実味を帯びてくると、勝は焦りを覚えた。まさか麻奈の事
ではあるまいと思ったが、違うという確証も無いのである。
焦りは日増しに募り、それにつれ村本が意識して勝を遠ざけるようになった。もともと縁が
薄いだけに自分の方から接触する事も出来ず、勝は遠くから銃口を突きつけられている
かのような緊張感を抱きながら、日々を過ごさねばならなかった。村本が妹を抱いている
かもしれないと思うだけで、勝は心臓が痛んだ。噂話の通り、誰にでも体を許すという事
に想像が及べば、それはもう狂おしく、胸を掻き毟りたくなるような衝動にかられた。
噂が流れるようになった頃から、麻奈は勝の部屋に遊びに来る事は無くなっていた。食事
の時などでも携帯電話をずっといじってばかりで、家族の会話に入ってこなくなった。両親
はそれを思春期と解釈したが、勝は違った。やはり麻奈の身の上に何か起こったのである。
日曜ともなると朝から出かけていき、夜遅くまで帰らないし、派手な服装を好むようになり、
すれ違いでもすれば香水の匂いをぷんぷんとさせた。時折、タバコの匂いなども混じるの
で、その体臭はまるで場末の安酒場で働く女給のようであった。ある時、勝は麻奈の留守
中に何か証拠となるような物が無いかを探した。
(何か無いか、何か)
写真や手紙など何でもよかった。この蛇の生殺しの如き焦燥から、早く解放されたかった
のである。麻奈が村本の玩具とされている事を知った所でどうにもならないが、級友の噂話
に聞き耳を立てるような生活はもう御免だった。本棚、箪笥、机など、ありとあらゆる物を
ひっくり返し、勝は噂を裏付けるよすがを探した。そしてついに、決定的な証拠を見つけた
のである。
「うっ!これは…」
それはプリクラと言われるシール写真だった。村本と麻奈が顔をくっつけ、フレームに収ま
っているシールが何枚もあった。それに愛してるだの大好きだののメッセージが添えられ、
二人が恋仲である事が分かる。勝はシールを手にして肩を落とした。知りたかった事実を
突き止めたというのに、気持ちが満たされる事はまるでなく、焦りの代わりに絶望が両肩に
ずしりと圧し掛かっただけだった。
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